大阪中之島の歯科医院 DUO大阪歯科医院

デュオ大阪歯科医院

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歯周病担当医 大月基弘

歯周病担当医 院長 大月基弘歯周病治療の聖地であるスウェーデンで学び得たもの

『Back to the basic』

これは、私を遠く北欧の地へと導いたキーワードです。
大学を卒業して2年間の臨床研修を終えた後、勤務医として地域歯科医療に従事していました。その間、アメリカのペンシルバニア大学で勉強された師匠の元で、口の中を一つの器官としてとらえ、機能的・審美的に回復していくという包括的歯科治療を学びました。月に1度の文献抄読会は、深夜に及びながらも師匠、同僚と共に熱い議論を交わし合いました。又、様々な勉強会(Club GP, 鶴歯会、TIG)にも参加し、理論、テクニックを学んだものです。しかし、自分の力を自己分析した時に、テクニカルな事よりも理論的なこと、基礎的なことをもう一度見直す必要性を感じ始めていました。

そして日々の診療、勉強を進めるごとに、自分自身の歯科に対するポリシー、つまり理想とする治療を象徴する言葉としてあった『Simple(シンプル, Minimal Intervention(最小限の侵襲), Patient friendly(患者さんに優しい治療))を突き詰めたいという思いが強くなり、歯周病、インプラントの専門医になりたい、歯周病治療、研究の聖地であるスウェーデン、イエテボリ大学歯学部歯周病科で学びたいという具体的な夢を抱き始めたのです。

この夢を実現するために私が行った事は『夢を口に出す』ということ。そうする事によってまず、自分自身を奮い立たせる力が生まれ、人からは新しいアイデアや考えなどをアドバイスしてもらえることもあります。それらは夢を具現化していくためにとても有用なものとなりえます。そして周りのサポートを得ながらも、もし達成できなければ周りの人たちに「やはり出来なかったか。。。」と後ろ指をさされるかもしれないというプレッシャーとなり、自分を追い込んでいくことにもなります。事実、留学前には多くの先生方に厳しくも暖かい励ましと助言をいただき、『留学に対する夢と情熱を語る』ことで入学試験を乗り切る事ができたのだと思っています。

私が受講したスウェーデン、イエテボリ大学歯周病科のポストグラデュエートコースは、臨床、講義、セミナー(ディスカッションが中心)、プレゼンテーション、研究、在学生向けの教育、そして筆記、口頭試問など様々な形態のテストで構成されていました。
臨床は週に20時間割り当てられており、3年間で約100名の歯周病患者を治療する事となりました。すべての患者さんは一般の診療所からの紹介患者で、ほとんどの患者さんが中等度から重度の歯周病にかかっていました。また侵襲性歯周炎(病気の進行が早く、治療が困難な病態)に罹患している患者さんも、スペシャリストクリニックゆえ多くみられました。

クリニックでは毎回ドクターが待合室へ出向き、患者さんと対面します。初診時は名前を名乗り握手をした後、診療室へと案内するのですが、欧米では当たり前のことかもしれませんが、私はこの『握手をする』ことが患者さんの緊張感を取り、距離を縮めることに一役かってくれているように感じていました。

講義は、様々な分野のスペシャリストが国内外問わずやってきて、専門性の高い授業が提供されました。歯周病のみならず、カリオロジー(虫歯学)、放射線学、細菌学、インプラント学、外科学、統計学等、多岐にわたり幅広い知識を得ることが出来ました。教科書や論文で目にする著名な教授陣から直接受ける授業は、その教授の人となりも直接肌で感じる事ができ、毎回の授業がとても貴重な時間でした。

セミナーは文献抄読がメインで、セミナーの2、3日前に10本ほどの論文を手渡され、それらについて2〜3時間にわたりディスカッションを行うというものでした。留学前に英語の特訓はしたものの、多くの文献を読み、理解し、ディスカッションを英語で行うことは、生易しいものではありませんでした。ディスカッションのスピードについていくのがやっとで、発言できず悔しい思いをしたことも多々あります。

また症例検討会の中で、治療困難なケースをどのようにして治していくのかをプレゼンテーションを通して多くの著名なドクター、同僚たちと熱くディスカッションを行います。補綴、矯正、虫歯、根管、インプラント治療が必要な複雑なケースの場合、専門医と紹介元のドクターとの連携が必要になるため、治療手順、方法を綿密に検討し、治療スケジュールを決定していかねばなりません。サッカーで言うならばミッドフィルダーとして司令塔にならなくてはならない訳です。また、実際に治療が終了し、メインテナンスに入っている患者さんのケースを検討する事も行います。そこでは、頭の切れるインストラクター陣が意地悪?で難解な質問を投げかけてくるので、いかに明快かつエレガントに科学的根拠に基づいた答えを出せるかを試されました。

研究も必須事項で、それぞれに異なる題目の研究を行います。ここに割かれる時間はコースの中では比較的短いため、自分の空き時間を使っていかに効率よくその分野のスペシャリストになれるかが要求されます。実際、動物実験に携わった私の研究は、最終試験の直前になりやっと結果が出たため、最終試験に含まれる実験結果のレポート提出期限に間に合わせるため、ただでさえ短い睡眠時間を削り、毎日ふらふらになりながらも大学に通っておりました。

テストは、3年間6期の期末ごとに3週間程度かけて回答するテストがありました。何を見て書いても自由ですが、科学的根拠をもって回答する事が求められます。自分の見聞や個人的意見のみの記述ではもちろん信頼されないわけです。そのため、授業で紹介された以外の多くの文献にも目を通さなくてはなりませんでした。毎テストごとに出来上がるレポートは60から100ページほどになり、ちょっとした本のようです。
 
最終期末には、ヨーロッパおよびスウェーデンの歯周病専門医になるための最終テストがありました。治療が終了した30症例のドキュメンテーション、そのうち5症例に対するケースプレゼンテーション及びそれに対する口頭試問、研究についての口頭試問及び評価が、ヨーロッパ歯周病学会(EFP)からの外来教授2名、イエテボリ大学歯周病学科の教授1名 の計3名により、3時間に渡り行われました。この3年間の集大成ともいえる最終テスト。常にこの最終テストを意識して勉強してきたにもかかわらず、試験直前まで研究を行なっていたので、症例ドキュメンテーション作り、プレゼンテーションの練習、研究・口答試問のための試験勉強、そして臨床をこなさなくてはならず、最後の100日はまさに死に物狂いの日々でした。

このコースは1学年ごとに3、4名の生徒が入学を許可されます。私の同期は、ギリシァ人、サウジアラビア人、日本人といった国籍構成で上級生、下級生を含めるとスペイン、イタリア、ポルトガル、ロシア、スウェーデン人と非常にバラエティに富む多国籍な構成となっていました。そのため文化や考えかたの違いもあり、相互理解には時間がかかることもありました。しかし、上下関係に関わらずディスカッションできる事はお互いにとっての最高の刺激となり、皆よき仲間でありライバルでもありました。そんな仲間に恵まれたお陰で、過酷な最終試験も無事に合格し、歯周病/インプラント学のスペシャリストとして認定されることとなったわけです。
『Back to the basic』、3年間で基礎医学を幅広く学び、多くの文献を読み漁ることにより、批判的に論文を解釈する訓練もおこなってきました。スウェーデンの保険制度に則り、無駄の無い、科学的根拠に則ったシンプルな治療がスムーズにできるようになりましたが、日本の制度や日本人のメンタリティを考慮した治療も重要であると考えています。治療というのは、その国における保険制度、社会的背景、宗教観など様々なファクターが複雑に絡み合い、治療方針が決定される、そういったことを実際に肌で感じながら治療に携わる事ができたことは大きな収穫となりました。

学問ももちろんですが、3年間の海外生活で得られた“プライスレス”な、生のスウェーデンでの生活経験、国際色豊かな、個性的で温かくも底抜けに明るい友人たち、そしてイエテボリ大学歯周病学科で本物の歯科医療に対する知識、技術、そして倫理観を授けてくださったJan Wennstrom教授、Tord Berglundh教授、ポストグラデュエートコースのディレクターであったIngemar Abrahamsson准教授、Lars Heijl教授、私のスウェーデンにおける父親のような存在である歯周病と根管治療のダブル専門医であるGunner Heden先生、そして多くの私を支えてくれたインストラクターの先生方との出会いはこれからも私の人生の道標になることでしょう。


歯周病担当医 院長 大月基弘歯周病治療の聖地であるスウェーデンで学び得たもの


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