歯を残すということ
当院では“歯を残す”ということに歯内療法専門医・歯周病専門医・認定歯科衛生士がタッグを組んで全力で取り組んでいきます。まず誤解のないように申しますと、残せない歯は“Hopeless”(歯牙保存の望みなし)と診断され、この場合は抜歯することをお勧めいたします。なぜなら厳密な診断のもと、残せないと判断されたものに対して患者さんの時間、労力、費用を浪費することは、患者さんにとって決して幸せなことではないからです。抜いたほうが良い歯を保存されて、周囲の組織が大きく破壊されている状況をよく見受けるからです。 | | |
次に“Questionable”(歯牙保存が出来る可能性があるが断定できない)な状況の場合、我々は全力を尽くして歯牙の保存に取り組みたいと思っております。昨今、インプラントブームともいえる状況があり、適切に治療すれば残せる歯が抜歯されているケースをよく見受けます。例えばある文献によれば (Tomasi et al., 2008) 歯牙は10−30年の間に1.3%−5%の歯が喪失しましたが、インプラントにおいては10−20年で1−18%のインプラントが喪失しました。インプラントと歯牙保存どちらが優れているかをフェアーに比較することは、実は現状の科学では難しいことなのですが、少なくともいままで蓄積された世界中のデータを評価すると、インプラントが歯牙よりも長持ちするとは言えません。
当院院長はスウェーデンで厳しい3年間のトレーニングを積み、権威あるヨーロッパ歯周病学会から専門医として認定を受けた、日本人では初めての歯周病/インプラント専門医であり、インプラント治療のエキスパートでもありますが、それを必ずしも第一選択とはしません。あくまでも一つの選択肢なのです。インプラントは適切に使われれば、患者さんの口腔機能をドラマティックに改善することができます。入れ歯では噛めなかったタコやイカそしてせんべいなどを しっかりと噛み砕き、消化器官に運ぶことができる。いままで丸呑みに近かった食生活がガラリと変化します。
ただし、ご両親から授かった素晴らしい体の一部を簡単に諦めてしまうことはありません。まずはしっかりとした診断のもと、“歯を残す”ことをしっかりと考えていきましょう。
参考文献
Tomasi, C., Wennstrom, J. L. & Berglundh, T. (2008) Longevity of teeth and implants - a systematic review. J Oral Rehabil 35 Suppl 1, 23-32. doi:JOR1831 [pii]10.1111/j.1365-2842.2007.01831.x. |
|
|
|
|